都市伝説

世界一の富裕国は50年足らずで最貧国になった|ナウル共和国の歴史

世界には僅か50年足らずで世界一の富裕国と世界有数の最貧国を経験した国家があります。

今回ご紹介するナウル共和国は、リン鉱石の採掘業により一時期は日本の倍以上のGDPを誇っていましたが、現在は経済が破綻し国民の90%が失業者という都市伝説のような国家です。

ナウル共和国の歴史からその隆盛を見ていきましょう。

ナウル共和国とは

ナウル共和国の国旗

国家情報

  • 面積:約21k㎡
  • 人口:約1万1,000人(2018年時点)
  • 首都:ヤレン
  • 公用語:ナウル語、英語

ナウル共和国は、ハワイとオーストラリアの間に位置する南洋の島国です。

世界で二番目に小さい国連加盟国でして、面積は21k㎡と非常に小さく、東京都の品川区とほぼ同等の広さと言えばイメージしやすいでしょうか。

ナウル共和国には珊瑚礁がありません。そのため南国と聞いて思い浮かぶような礁湖がなく簡素な船を用いての漁業は不向きな国です。

これらの立地条件を鑑みるとナウル共和国は非常に不利な国なのですが、一時期は世界一裕福な国として栄えた事もありました。

国民の90%が無職、80%が肥満

ウエストサイズをメジャーで測っている女性

ナウル共和国では国民の90%が働いていません。さらに国民の80%が肥満であるというデータも出ており、ナウル共和国が抱える問題の一つとなっています。

ナウル共和国でもっとも多い死因は糖尿病です。

これほど高い肥満率を叩き出したのは、国民の主食が缶詰である事に起因しています。

ナウル共和国は食料自給率が極端に低く、現在の食料は輸入の缶詰に頼っています。脂質の多い缶詰を毎日食べる事で栄養が偏り、国民の肥満化が進んでしまっているのです。

なぜナウル共和国の国民は働かないのか

伸びをしながらあくびをするキジトラ猫

ナウル共和国は、1968年に独立国となり、リン鉱石の採掘事業で栄え非常に豊かな国になりました。

輸出貿易で得た収益は国民の生活費を補填してもお釣りがくるほどで、働く必要がなくなった国民は次第に労働を辞めていきました。

祖父母の代からナウル共和国国民には労働という概念が根付いていないため、失業率の改善は非常に困難なようです。

詳しくは後述しますが、これは農業や漁業といった第一次産業が廃れてしまった事や政府が行なっていた国営事業の失敗などにより雇用状況が悪化してしまった事も原因の一つとして挙げられます。

主産業がないナウル共和国では、人口に対して用意出来る雇用が極端に少ないのです。

アメリカよりも裕福だったナウル共和国

瓶詰めのコインと丁寧に積み上げられたコイン

ナウル共和国には19世紀以前の資料がほとんど残っていません。ですが、かつてのナウル共和国は、漁業と農業が盛んな国だったと言われています。

近代化された裕福な国ではありませんが、国民は特に不満を感じておらず、つましい生活を送っていたようです。

ところが、19世紀になると欧米による侵略が世界各地で始まり、様々な国を植民地支配下におきました。

ナウル共和国も例外ではなく、ドイツの植民地となります。

ナウル共和国がドイツの支配下におかれて間もない頃、なんとナウル共和国の国土全体がリン鉱石で生成されている事が分かったのです。

リン鉱石とは

リン鉱石の化石引用:Wikipedia

リン鉱石とは化学肥料となるリンを採取出来る鉱石で、発生過程によって三種類に分類する事が出来ます。

リン鉱石の種類
  • 化石質鉱床
  • グアノ鉱床
  • 火成鉱床

ナウル共和国を構成していたリン鉱石は「グアノ鉱床」。

これは島に鳥の糞や死骸が堆積し、長い期間をかけて化石化した鉱石です。

リン鉱石の輸出により、富裕国の一員に

スーツケースに入れられた札束

当時、ナウル共和国を統治していたドイツは、リン鉱石の採掘権をイギリス資本の企業に与えて1907年にリン鉱石の採掘を開始しました。

この鉱石産業がナウル共和国の経済を大きく発展させた事は言うまでもありません。

その後、ナウル共和国は第一次世界大戦、第二次世界大戦などの紆余曲折を経て1966年に独立を勝ち取り、リン鉱石の輸出によって得た収益がそのままナウル共和国へ還元されるようになりました。

この鉱石産業は、かつてのナウル共和国が携わってきたココヤシなどの栽培や漁業から考えられない利益を生み出していたのです。

全盛期のナウル共和国では、一人あたりのGDP2万ドルという驚異的な数字を叩き出し、世界一の富裕国となりました。

1981年、日本の一人あたりのGDPは9,944ドル。当時のナウル共和国は日本の倍以上の経済力を持っていました。

鉱石産業が非常に儲かっていたため、ナウル共和国は国民から税金を取る必要がなくなりました。

さらに

  • 医療費
  • 学費
  • 水道代
  • 光熱費
  • 生活費

これらが全て無料で、国民の生活費もすべて国が負担していたのだから驚きです。

さらに、新婚の夫婦には2LDKの一戸建てを無料で建設するという制度までありました。

ナウル共和国の経済破綻はなぜ起こったのか

空っぽの財布を広げる男性の手

油田や化石ガスなど、世界に存在する資源はいずれ枯渇してしまいます。

ナウル共和国のリン鉱石も例外ではなく、20世紀末にとうとう枯渇してしまいました。

元々、ナウル共和国は農業や漁業で生計を立てていた国ですが、リン鉱石を採掘するために畑は潰され、伝統的な漁業はスポーツフィッシングという娯楽に様変わりしていました

消費物資のほとんどを輸入に頼るナウル共和国では、現金がなければ食べ物すら手に入りません

魚を取って食べようにも、釣りに必要なボートはすでになく、手元に残っていたのはモーターボートだけ。

モーターボートを動かすためのガソリンが手に入らないため漁に出る事もかなわないのです。

かつては畑として機能していた土地はリン鉱石の採掘のため凹凸が激しく、石灰岩が露出しているため再度畑として蘇る事はないでしょう。

世界一の富裕国として名を馳せたナウル共和国は、一瞬にして最貧国となってしまったのです。

当然、ナウル共和国もいずれリン鉱石が枯渇する事は予期しており、

  • 海外への投資信託をして金融国家となる
  • ホテルや飲食店などの国営事業で利益を得る

こうした対策を以前から施してきました。

しかし、海外投資はアメリカに「マネーロンダリングだ」と指摘され失敗。さらに国営事業も赤字続きとなり、ナウル共和国には不良債権だけが残ってしまったのです。

こうした危機的状況にも関わらず、現在もナウル共和国の失業率は90%近いままです。

資源が枯渇したナウル共和国の収入源とは

木の机の上で直立する25セント

国家の存続すら危ぶまれているナウル共和国ですが、現在の国営費用はどこから賄われているのでしょうか。

現在のナウル共和国は、国民が生産に関わらないおかげで民間企業がほとんどありません。

そのため経済の発展が見込めず、現在はアフガニスタンからの移民受け入れによるオーストラリア政府からの謝礼金が主な収入源となっています。

失敗に終わった全国民移住計画

書類やノートにコーヒーをこぼしてしまっている画像

1962年、オーストラリアは、ナウル共和国の資源を過剰採掘した責任を認め、ナウル共和国の国民を移住させる計画を指導しました。

ナウル共和国はリン鉱石の採掘によって農業が出来なくなり、この国を復興させるには途方もない金額の資金が必要になった事から、移住を計画したといいます。

移住計画が始動した後、オーストラリア政府はナウル共和国の国民が移住するのに良い島はないかと調査を開始しました。

しかし、候補地として挙げた島は地域住民からの反対や、十分な雇用が確保出来ないといった理由からことごとく却下され、ナウル共和国国民の移住先は中々決まらなかったのです。

計画発足から1年が経った1963年、オーストラリア政府はカーティス島を彼らの移住先として決定しました。

カーティス島は、元々私有地だったのですがオーストラリア政府が国有化し、そこにナウル共和国国民を住まわせる事で様々な産業を確率させようと計画したのです。

ところが、この知らせを聞いたナウル共和国国民はカーティス島への移住を拒否しました。

オーストラリアが指定したカーティス島はオーストラリアの領土であり、そこへ移住する事でナウル共和国国民のアイデンティティが失われてしまう事を嫌ったのです。

ナウル共和国国民からの反発により、オーストラリア政府は態度を硬化させ、結局この移住計画は失敗に終わりました。

編集後記

絶海の孤島に存在するプライベートビーチ

今回は富裕国と貧困国を経験したナウル共和国をご紹介しました。

南洋の島国に住む人たちは元々農業や漁業で自給自足生活を営んでいる事が多いのですが、こうした国に対して先進国が余計な法律を作ったり政府を設置したりして近代化させる事は、本当に現地の人たちのためになる支援なのでしょうか。

ナウル共和国もかつては労働をして自給自足の生活を送っていました。農業や漁業があったからこそ、お金がなくても飢えずに済んでいたのです。

ナウル共和国の例を見ていると必ずしも正しいとは限らないのだと思います。

現在、ナウル共和国は枯渇してしまったリン鉱石の二次採掘が可能になり、経済立て直しの兆しが見えてきているようです。

同じ過ちを繰り返さないよう、インフラの整備や農業・漁業の確率に頑張ってほしいなと思いました。